ヨーロッパ全域に樹木信仰があって、これは作物の再生と出産を願うものだったんだそうな。
フランスでは、5月に行われる祭りで、失恋した若い男が葉っぱで包まれて眠ったフリをするっていうのがあるらしい。で、その眠ってるところに別の若い女がやってきて気に入った人を連れてって居酒屋で一杯やるんだそうな。
いやあ、無事拾われた男は新しい恋人見つかって大満足だけど、失恋した挙句次のパートナーに恵まれなかった男はふんだり蹴ったりでない?そこはフランス人だから逞しく次の相手さがすのかな?
似たような風習はロシアにもあって、この場合は男役をやる娘さんが別途登場して単に踊ったりするだけなんだって。ロシア人には失恋男性の傷口に塩を撒くマネは出来なかったと見える。そーだよねー。
こういうのは植物の再生を擬似的に行う共感呪術の一種なんだそうだ。なんだかゲームのネタに使えそうな話になってきたよね!
祭じゃ!人死がなんじゃい!
っていうメルヘンチックなものばっかりではなく、本気で人死がでる祭りも紹介してるのがこの本の醍醐味だ。
日本でも柱にのっかるとか山車を曳くとかして死人が出てなんぼの祭りがあると思うけど、蛮人大好きフレイザーさんも当然そういう荒々しい風習を紹介することは欠かさない。
以下はボヘミアのメイポール(五月の樹木の祭り)の説明。
- 若者がモミがマツを森から持ってきて高いところに立てる
- 娘さんが花束やらリボンやらで木を飾り立てる
- 暗くなったら木の周りに火をつける
- 若者は火がついてる時間をタイムアウトにして、花束やリボンを取りに木を登る
- 当然けが人続出して、祭りが禁止される
なんで火くべるんだよ!帝愛でもそんなヤバいゲームやらさねえよ!
と、こういうのが樹木信仰を表しているものらしいんだけど、単に年に一度命を賭けたバカ騒ぎをしないと憂さが晴れない人たちのようにも見えなくもない。こういうエピソードばっかり集めるから、フレイザーもうっかり
古代文明の全盛時代、崇拝が野蛮な迷信と野卑なお祭り騒ぎの領域に留まっていたことは、われわれの場合もそうであったように、疑い得ないことである。みたいなどう見ても単なる悪口を本編に書いちゃうんだと思う。
(第一章 第五節 古代の樹木崇拝)
何か誤解しているような
さて、第二章に進んでくると、古今東西の王様紹介のはなしになり、いよいよ我々のよく知っている王様、ミカド(天皇のこと)が出てくる。しかしこいつの仕入れた天皇情報は何から得たのか、すごいことになっている。
かつての天皇は・・・
- 地面に足をつけるといけないので、移動は男たちの肩に乗りながら
- 髪や爪を切ると神性が損なわれるので伸ばしたい放題
- 体を動かすと世界が崩壊するので、毎日座り続けて動かない
↑のような仕事をしてたんだけど、そのうち辛くなって
- 天皇が動かないのは厳しいので、天皇がかぶってる冠が動かければ世界崩壊しないって決めたらいいんじゃない?
- 玉座には冠だけ置いてればいいんじゃない?
- で、冠に豪華な食事をとってもらおう
- ちなみに、天皇が使った食器や服を普通の人間が触ると呪われるから、食器は毎回割ろう
誰だこんなことフレイザーに教えたやつは!
古代日本の持衰あたりと混じってるような気もするけど、本当の元ネタはなんなんだかさっぱりわからない。少なくとも日曜朝の皇室アルバムにこんなカルト教祖みたいなおっさんや単なる冠だけが映されてたら放送事故を疑う。
というわけで、この人のいうことは少しずつ信用できなくなってきたけど、ファンタジー世界の創作にインスピレーションを与える存在としては結構重宝するよね。古代の王様の玉座に冠だけ鎮座してる絵柄とかインパクト強いじゃん?実は天皇なんだけどな。