2012年04月08日

『銃、病原菌、鉄』 2005年増補章が無償公開されてる〜

朝日新聞 ゼロ年代の50冊第一位獲得、ピュリッツァー賞も受賞した超有名本、『銃、病原菌、鉄』の一部増補した部分がWebで無償公開されてる〜!
 
http://cruel.org/diamond/whoarethejapanese.pdf
 
これは見ものだ。
 『銃、病原菌、鉄』は先史時代から現代までの人類史を生物学者の視点から整理した画期的な本で、日本語では文庫本も出てる

http://www.amazon.co.jp/%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%8A%83%E3%83%BB%E7%97%85%E5%8E%9F%E8%8F%8C%E3%83%BB%E9%89%84-%EF%BC%88%E4%B8%8A%EF%BC%89-1%E4%B8%873000%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%82%8B%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E5%8F%B2%E3%81%AE%E8%AC%8E-%E8%8D%89%E6%80%9D%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89/dp/4794218788
http://www.amazon.co.jp/%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%8A%83%E3%83%BB%E7%97%85%E5%8E%9F%E8%8F%8C%E3%83%BB%E9%89%84-%EF%BC%88%E4%B8%8B%EF%BC%89-1%E4%B8%873000%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%82%8B%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E5%8F%B2%E3%81%AE%E8%AC%8E-%E8%8D%89%E6%80%9D%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89/dp/4794218796

なにぶんスケールが壮大なので、細かい所「???」と思う部分はあるんだけど、取り扱う時間は超古代から現代、空間はニューギニアからヨーロッパ、これらすべての範囲を統一した視点から論じているのでスケールがでかくて脳汁がとっても出る。

要約すると現代西ヨーロッパの人間が世界で一番豊かなのはユーラシア大陸が東西に長かったからですというお話。あ、俺のどうしようもない要約だけ見てると即座に神々の指紋と同じカテゴリに入れてしまいそうだけど、そんなんじゃないよ?

  1. 大陸が東西に長いと同じ緯度の地域が大きくなる
  2. 家畜化しやすい大型哺乳類がいっぱいいて、みんなで情報共有できる
  3. 家畜を飼うと集団で暮らせるようになって文明が勃興する
  4. 他地域より早く技術が進歩する
  5. 家畜と一緒に暮らすと様々な病気に耐性ができる
  6. 他地域より病気に強くなる
こういう論理展開だ!

生物学者から見た観点だから、どうしても動物を皮切りに物を見てしまいがちだよね。多分地質学者がこの手の本を書いたら違う切り口になるんだろうと思う。ただこの動物を皮切りに見た家畜の話が分厚くて一番面白い。

たとえば現在家畜として飼われている生物は、動物全種のなかでもほんの数種類しかないそうな。あんまり大きな動物は繁殖に時間がかかるから家畜向きじゃないし、小さいのは食料にも使役にも役に立たない、と。例えばタイやらインドやらで半家畜化している象なんかは繁殖に手間がかかりすぎて子象を森から連れてきて育てるほうが効率いいんだって。なんかウナギみたい。あとシマウマは気性が荒くてどうにも家畜化できないとか。

で、こういう家畜向きの生物が一番多く住んでいたのがユーラシア。だから古代から現代にいたるまで、歴史の中心はユーラシアだったんだと。うーん、ちょっと説明が後付っぽくね?と思うけど、生物学からの視点としてはなかなか面白いよね

と、今までは話しの前段。これから説明するのは増補版のお話なんだけど、これまで触れられてなかった日本の話をしてるので注目だ!なんで日本がこれまで触れられてなかったかといと、先史時代がどうにも他と違って例外だらけで理論が立てられなかったんだそうな

まあよくよく考えたら日本って農耕こそ積極的にやってきたけど、家畜はあんまり利用してないからこの作者の守備範囲外だよね。それでもこの作者は果敢に論を組み立てていて、だいたい日本の文明の進展は以下のようになっているらしい

  • 12000年前くらいに、日本では土器が使用され始めた
  • それから紀元前400年前くらいまで、農耕も始まらず、ず〜っと狩猟採集と補助的な農業をしていた。彼らが縄文人
  • 紀元前400年、鉄器と水田稲作を携えた朝鮮からの移民が日本に大挙して押し寄せ、縄文人を武力で圧倒して追いやった。彼らが弥生人
  • 弥生人の祖先は故郷の朝鮮では新羅によって圧倒され、言語の痕跡を残さなかった。候補地は高句麗・百済・任那など

うわすっげぇ普通!増補版本体ではこの説は日本人・韓国人双方で人気無いだろうがと書いているけど、一昔前にメジャーだった日本人の形成の理論そのままじゃないですかねむしろ。韓国事情はしらないけど日本ではわりかし有名な説だったよ。訳者コメントも似たような感想だったな。

で、現状の日本人論は稲やY遺伝子のDNA鑑定結果が進んで、

  • 縄文人と弥生人は武力対立とかしておらず、割りと縄文人のDNAが残っている
  • 日本で見つかる稲のDNA2種類のうち一つは朝鮮半島では発見できず、長江河口域から直接やってきた可能性が高い

っていう結果になってるはず。作者が植物学者ならもうちょっと違う論調になったんじゃないかな?

それより引っかかったのは、増補版全体にちらほら見られる日本人が頑固だから俺の説を受け入れやがらねえみたいな口調。なんかこの著者の他のところでも、日本人が合理的なローマ字を使わないのはプライドが高くて漢字に優越感を感じてるからだみたいなこと書いていたんだけどこの人(ジャレド・ダイアモンド)の中で日本人は一体どれだけ無駄プライドを保持してる人間なんだ。

こっから先は感想というか想像なんだけど、ジャレドが自説を組み立てるときに、まずヨーロッパ人が南北アメリカ大陸を武力制圧したときのことを念頭に置いていて、世界各地の文明同士が接触する場面で同様な武力制圧を見たので、日本の縄文時代でもそれが起きたと考えたのでしょう。それでも日本人がいや縄文人と弥生人はそこまでシビアに衝突してないよって説を頑なに取り下げないもんだから、徐々に苛立ってきたんじゃないかと。

この人の一般的な歴史観ってのは↓の文に現れていて、いや世界中歴史上全部がこんな接触の仕方してるわけないだろ例外あるんじゃね?って思ったりする。

農業が拡大したのは主に農民が狩猟民より急速に増えたせいだ。そしてもっと強力な技術を発明し、狩猟民を殺したり、農業に適した土地すべてから狩猟民を追い払ったりしたのだ。現代では、ヨーロッパの農民が北アメリカ東部のインディアン狩猟民を駆逐し、アボリジナルのオーストラリア人を駆逐し、南アフリカのサン人を駆逐した。同じように、石器を使う農民も前史時代にはヨーロッパ、東南アジア、インドネシアの至るところで狩猟民を駆逐した。

で、詳細に調べるときっと日本以外でもこの手の例外はあると思うんだ。たまたま日本が例外の中でも主要国で目立つからやりづらいだけで。文明の発達度合いの差を大型草食哺乳類の分布っていう極めて大雑把な指標だけで説明しようとするから細かい所で漏れが出るのは当然だと思うけどな。まあでも大雑把な指標でど〜〜〜んと本ださないと、こんなに痛快な読み味にならないし売れなかっただろうし・・・バランス難しいっすよね。

ああ、この手の本をちょっと前に読んだ気がする。欧米から中東・アフリカと大雑把な説で論を進めて組み立てると、日本あたりが例外になって説明に困るやつ。サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』だったか。

http://www.amazon.co.jp/%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%A1%9D%E7%AA%81-%E3%82%B5%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3/dp/4087732924

こいつもそのたぐいかと。
posted by LoyalTouch at 07:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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