2017年04月21日

運動、瞑想、睡眠、肉420グラム!『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』

人類史に関する本は昔から好きで、
『ヒトはなぜヒトを食べたか』http://nmksb.seesaa.net/article/361676526.htmlやら
『繁栄』http://nmksb.seesaa.net/article/426059435.htmlやらいろいろ読んだんだけど
今回は文化人類学みたいな文系方面から攻める話ではなく、生物学的な話、どっちかって言うと理系方面から攻めるお話だ。


本の概要を説明すると、生理学的な見地からトレイルランやマインドフルネス、パレオダイエットをお勧めする
という内容なんだけど、科学的な説明部分が反例への反論などが少なくやや説明が薄いのと、
そのかわり要所要所に挟まれるケーススタディーがなんかアレ。つまり若干スピリチュアル系啓蒙書っぽい。
ただ科学的説明の箇所は多岐にわたって興味深いものも多く、完全にアウトな本でもなさそうなので
そういう分野的にギリギリなセンスの部分も味わいだと思って楽しむと良いと思う。



アスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜ける

本書のお勧め生活習慣のメインとなるのが走り。特にトレイルランという山道を長距離走る運動法。
根拠となるのはユタ大学のデヴィット・キャリアーの「持久狩猟仮説」
これは、人間の身体は極めて長い時間走ることができるように進化したというもの
人間の特長は知能だけじゃなかったというわけだ。すごーい。

screenshot.50.png
※長距離力を活かすヒト

ここは同書でちょくちょく引用されてる『BORN TO RUN』が詳しいらしい。
ただポイントはジムで走れば良いというわけではなく、
地面の感触を感じられるよう裸足あるいは薄いサンダルで、
周囲に坂やぬかるみ、突然あらわれる犬のようなランダムなアクシデントがある環境で
走るのがよいらしい。
これは、足からの触覚、周囲のアクシデントからの視覚聴覚の刺激が
身体と脳の健康にいいからというわけらしいんだけど、視覚聴覚の刺激にはもう少し意味があるそうな。

CheapなThrillに身を任せても明日におびえていたよ

自然の中で運動する効用は、アクシデントによる刺激の他に
自然そのものを鑑賞することで人間の精神にいい影響があるとのこと
同書では第7章バイオフィリアで詳しく説明されており、この精神への影響の名前もズバリ、バイオフィリア。
運動せずとも森林浴みたいに散歩したり部屋に観葉植物があったりするだけでもいいらしい。

ただし、あんまり鉢植えを増やすとかえって不安を呼ぶようで、適量がある
こっちの不安の方はバイオフォビアと呼んでいる。
なんでこんな現象が起きるかというと、石器時代あたりの名残で、
眺望良好な場所には外敵がおらず、森などではいつ外敵が潜んでいるかわからないという環境で
長年過ごしてきたからだそうな。

じゃあこうしたバイオフォビアを避けるためになるべく見晴らしのいい安全なところだけ選んで走ればいいかというと
これがまたそういうわけでもなく、前節で説明したとおり時折ランダムにアクシデントが訪れるような環境の方が
やっぱり刺激になっていいとのこと。自然は人間に優しいわけでも厳しいわけでもなく、徹底して無関心であり
この無関心な部分がいいとか。

そして同書では、無関心な自然と対比しての人間同士の繋がりの説明に写っていく

It's your pain or my pain or somebody's pain 誰かのために生きられるなら

次の第8章同族意識の章では、オキシトシンの効用について説明がなされている。
オキシトシンは出産や母乳分泌など親子関係にかかわる脳内物質で、
この物質を摂取すると利他的な行動をとるようになったり、表情から気持ちを察する能力が向上したりすることが
実験により確かめられている。要するに温和な性格になるんで、現代社会では増やしておくと良さげだね。

じゃあ普段からオキシトシンを鼻にスプレーしときゃ賢者になれるのかというと
そんなことすると身体が薬剤に慣れて脳から分泌されるオキシトシンでは物足りなくなってしまうため、
ぶっちゃけ薬物依存と同じ状態になってしまう。考えりゃわかる話だけど同書では実際プレーリーハタネズミで実験した結果も載っけてる。

じゃあどうするのかっていうと、やっぱり運動、あと犬を撫で回してもオキシトシンが分泌されるらしい
オキシトシン近似物質のバソプレシンというやつは長距離走で増えるらしいんだけど
これは炎天下であまり水分をとらず走り回ると増えるとのこと。え、水分取らないのはまずいんでは…

ちなみにオキシトシンは単に温和な性格になるだけでなく、自分が仲間だと思ったものには優しく
外敵だと思ったものにはより敵対的に、排除するような性格になるという性質もあるそうな。
動物で言う子育て中の母親そのものだぁね。
こうした副作用とも言える攻撃性を抑え、人類が集団として生活するにはどうした工夫が必要なのか。
同書ではこれを恐怖の克服と自律神経の話にうつして説明していく。

It's your dream or my dream or somebody's dream 何も怖くはない

第9章 野生の脳では、太古の神経と呼ばれる迷走神経の役割について説明している。
この神経は脳から体の様々な部位を通り、一部喉や顔面筋に至る道をたどる長大な神経だ。
人類がまだ魚と未分化だったころ、脳〜心臓〜エラと繋がっていた神経の名残らしい。
この神経は戦闘態勢に入った時

  • 心拍数を上げる
  • 表情筋をこわばらせる
  • 喉を縮め悲鳴や怒号を上げる準備をする

など複数の効用を持つんだけど、他の動物と違い人間は
こうした戦闘態勢を自分の意志で解除することができる。

そして、この迷走神経をコントロールすることを意識すると、より効率的に戦闘態勢を解除できるそうな。
要するに表情筋、喉を緩め、呼吸を整える。迷走神経を鎮めるために瞑想するのだ。めー、そう(へー、そうといいたかった。苦しいのはわかってる)
この瞑想の手法、ストレスの解消の他にトラウマの克服にも使われている
薬物による治療よりもマイルドで効果が高い(と、同書では記されている)
ストレスやトラウマの解消方法としては瞑想の他にもお手軽なものがあるんだけど、そこは最後の方で説明する。

さて、ここまでで運動と瞑想の効用について本の後半から説明していったが、
題名に書いた睡眠、肉420グラム(グラム数は書いてないけど)については、同書1章に戻って説明しなおしたい。

Get wild and tough 一人では解けない愛のパズルを抱いて

話は1章「人類バージョン1.0」に戻る。ここでは人間とは生物的にどのような特長があるかという説明から入っていて、
記事の最初にあるように長距離走破力の説明もあったりするんだけど
その他にネアンデルタール人は陸上獣しか食べなかったけどホモ・サピエンスは魚も食べたよ、とか
脳の中でも信頼・共感・罪悪感・立案を司るニューロン(スピンドルニューロン、ミラーニューロンと呼ばれる)が特に発達してるよ、とか。

そう、人間の最大の特長は何と言ってもこの共感力で、一人では生きていけない過酷な環境でも
社会性を武器に生き延びてきたわけだ。
だがその代償として非常に大きな脳が必要になった。
この脳ってのが内臓の中でもえらくエネルギー食いで、生きていくためには大量のカロリーを調達する必要がでてきたのだ。
その結果人間は農耕を生み出してカロリー調達に成功したわけだが…

Get wild and tough この街で優しさに甘えていたくはない

同書第2章「現代人を苦しめるもの」、第3章「野生の食事」では、
農耕によって大量摂取が可能になったブドウ糖の害について語っている。

どういう話か。

「農業の誕生と文明病」の節でコロンブス到達以前のアメリカ先住民の遺骨調査の結果が説明されている。
この時代のアメリカ先住民は狩猟採集民と農耕民が混在していたんだけど、
狩猟採集民は農耕民にくらべて体格もよく、虫歯や骨の疾病も少なかったという。
ジャレド『銃・病原菌・鉄』やら以前書評書いた『ヒトはなぜヒトを食べたか』でも同じ話はされていたんだけど、
同書はここからこんな結論に達する。

現代病の原因はブドウ糖

エエエエ、と思うんだけど、それ以降甘味がいかに健康に悪いか、肥満と虫歯にかぎらず
喘息、乳がん、卵巣がんの起因にまでなることなどを語りはじめ、
最終的にパレオダイエットまで行き着く。

そう。パレオダイエットですよ。石器時代の食事をすれば健康になるという
要するに肉を食べてナッツを食べて炭水化物は取らないというあれ。
多分アメリカ人には向いてると思うんだけど日本人には向いてないと思うんだな。米食べないとしんどい

まあ同書のケーススタディとその周辺の文章を見るとこんなことをいう気持ちが分からないでもない
今のアメリカって、思った以上に清涼飲料水と甘味の調味料だらけなんだな。
普通に生活すると炭水化物まみれになっちまう。そういうわけで多少石器時代よりに寄せて
ちょうどバランス良くなるんだろう。たぶん。

というわけでアメリカではこうだけど要するにバランスが大事だよって話として俺は理解しておこう。
ところで健康的な生活には食事だけでなく運動も必要だ。
ただし運動をしたからといって必ず痩せるわけではないらしい。じゃあなぜ必要なのか。
それは次章で解説される。

Get chance and luck 君だけが守れるものがどこかにあるさ

第4章「野生の動き」では、脳の本来の機能は考えることや感情を司ることではなく
身体に複雑な動きをさせることであることを説いている。

例えばコアラは進化の過程であまり動かなくなったことから脳のサイズが縮んだということだし、
極端な話ホヤに至っては幼生の動き回るときには脳があるんだけど海底に定着すると自分の脳を食っちゃう
動かなきゃ脳はいらないからね。

つまり本来脳とは体を動かすために必要なものなので、
脳を活性化させるには運動が必要なんだそうな。運動の最大の効用とはこれ
そういえば鬱の対処に運動が効果的って話はよく聞くんで、要は精神の健康に効くんだな。

さて、精神の健康でに重要なものは運動以外にももう一つ
これがこの記事のタイトルの最後の項目、睡眠だ。

Get chance and luck 一人でも傷ついた夢を取り戻すよ

第5章「野生の睡眠」で語られているのは睡眠の効用だ。
睡眠は免疫力を向上させて脳の連続稼動による判断力の低下を防ぐ。
これは実験によって色々確かめられたんだけど、その他にも鬱やPTSDにも効果があるらしい。

とはいってもヒトをPTSDにさせる実験なんてできないんで、疫学的な方法を使った。
イラク戦争の軍人の中で睡眠時間の確保を厳密に求められたトラック運転手だけは、PTSDの発症が少なかったとのこと。

なるほど睡眠は脳をリラックスさせて心身を回復させるために必要なものだ。
じゃあなんで夢を見るんだろう?あれはどう考えても脳を興奮させてるようにしか見えないのに。

同書では、夢の「脅威のシミュレーション説」を取っている。寝ている間にライオンに襲われたとか崖から落ちたとか
そういう状態に陥った時どうするかを学習して、本番に備えているそうな。
というわけで怖い夢を見たからって何か不吉なことが起こるわけでもないんだね。
むしろ不吉なことに対処できるように身体が準備しているわけだ。

まとめ

以上、様々な話題に触れながら運動、瞑想、睡眠、低炭水化物メリットについて語っていた同書
結構興味深い話が多かったんで人間の生物学的側面やら古代の人類の生活様式やらに興味がある人にはお勧めです。
ただし健康法の情報源として読むとなると、具体的な実践方が書いてなくて多少物足りないのと
スピリチュアル方面にギリギリなんで、その用法用量を守ってというか。。。

まあこの記事も主にJASRAC方面にギリギリなんで人のことは言えないというか。。。(どいういう結びだよ)
posted by LoyalTouch at 06:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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